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2007年02月21日

超高級泡盛「秘蔵酒」の秘密に迫る

超高級泡盛「秘蔵酒」の秘密に迫る12月6日の記事で、山川酒造のデータを基に泡盛古酒(くーす)の価格決定理論について考察した。今回も、瑞泉酒造の30年もの超高級泡盛「秘蔵酒」(注)に同じ分析手法を適用し、その価格の妥当性を検証してみる。

====(注) 瑞泉酒造 秘蔵酒 ====
1887年創業の瑞泉酒造(佐久本武社長)は創業120周年を記念して、1972-76年にかけて仕込んだ「瑞泉・秘蔵酒・30年貯蔵古酒」を11月1日から12本限定で全国発売する。600ミリリットル入りバカラ製ガラスボトル入りでアルコール度数は33度。販売価格は税込み52万5000円となる。(10月26日、沖縄タイムス朝刊より抜粋)
==== 引用終了 ====

前回同様に、通販ショップ「泡盛 島めぐり」のホームページから、瑞泉酒造の古酒(くーす)の販売価格を調べてみた。結果は次の通りである。

■泡盛古酒データ(その1)■
(銘柄)         (度数) (年数) (税込み価格)
瑞泉イエローラベル 30度  新酒   900円
瑞泉白龍       40度   8年  2,650円
おもろ         43度  10年  3,050円
おもろ         43度  15年  4,080円
おもろ         40度  17年  7,060円
おもろ         35度  21年  10,800円
注:容量は全て720ml

超高級泡盛「秘蔵酒」の秘密に迫るしかし、ここで少し困ったことに気づく。先に分析した山川酒造の古酒「かねやま」のアルコール度数はすべて43度であったが、瑞泉酒造は30度から43度までとかなりバラツキがある。泡盛は度数によって酒税率が異なるため、分析を正確に進めるには、酒税の影響を除かなければならない。

ちなみに、泡盛は酒税法で焼酎乙種に分類され、租税特別措置により税率は本則(いわゆる本土)の65%に抑えられている。つまり、泡盛が属す焼酎乙種の税額はアルコール分43度で1kl当たり43万円だが、泡盛の場合は65%の279,500円となる。720mlの泡盛ボトルなら201円だ。さらに30度なら140円となり、アルコール度数13度の違いは酒税額61円の差となる。(税額の詳細は左表を参照)

アルコール度数による税額の影響を除くために、先に示した泡盛古酒データ(その1)を酒税課税前・消費税課税前の価格に修正する。アルコール30度の瑞泉イエローラベルなら、(900円÷消費税率1.05)-酒税額140円=717円である。以下、同様の手順で(その1)のデータを修正したのが(その2)となる。 

■泡盛古酒データ(その2) 酒税課税前・消費税課税前■
(銘柄)        (度数) (年数) (税込み価格)
瑞泉イエローラベル 30度  新酒   717円
瑞泉白龍       40度   8年  2,337円
おもろ         43度  10年  2,704円
おもろ         43度  15年  3,684円
おもろ         40度  17年  6,537円
おもろ         35度  21年  10,122円
注:容量は全て720ml

超高級泡盛「秘蔵酒」の秘密に迫る続いて、貯蔵年数毎に泡盛古酒データ(その2)を散布図としてプロットし、近似曲線を当てはめたのが左図だ。山川酒造の時より決定係数は低いが、グラフから見る限り概ね当てはまっているように見える。

[価格決定式]
販売価格=762.53×e^(0.1219×貯蔵年数)
決定係数=0.9768

この価格決定式に、貯蔵年数30年を代入すると、28,823円が得られる。瑞泉酒造の秘蔵酒はご丁寧にも600mlと一般的とは言えない容量であり、これを補正し酒税と消費税を加算すると、秘蔵酒の想定原酒価格は、(28,823円×(600ml÷720ml)+140円)×1.05=25,367円となる。

ここまで分析を進めて重大な事実が明らかになった。仮に今までの分析が真実なら、秘蔵酒の価格52万5000円のうち、泡盛原酒部分の価格はたったの25,367円ということになる。残る499,633円はいったい何の価値なのか。これにはヒントがある。新聞記事の「バカラ製ガラスボトル」がそのキーワードに違いない。

このヒントを信じ、グーグルでバカラを検索すると「バカラグラスは、”The Crystal of Kings” 『王者たちのクリスタル』の称号をもち、1764年、ルイ15世の承認によりフランス東部・ロレーヌ地方のバカラ村にガラス工場が創設され、世界中の王侯貴族たちに愛されてきた」とある。このいかにも高級な雰囲気を漂わせるバカラグラスが、秘蔵酒の価値の大部分を占めている可能性は大である。

超高級泡盛「秘蔵酒」の秘密に迫るそこで、作業はバカラグラスの価格調査に移る。通販ショップ「バカラ専門店 リビングウェルデ」で、秘蔵酒に使われている容器に酷似したボトル、「アルクール デキャンタ」を発見した。ショップの解説によると、アルクールは、高さ28.2cm、容量600cc、定価140,700円、販売税込98,490円とある。

容量600ccは、沖縄タイムスの新聞記事と一致する。しかし、それだけで秘蔵酒の容器が「アルクール デキャンタ」であると断定することはできない。そこで、通販ショップに掲載されている「アルクール デキャンタ」の商品画像と瑞泉酒造からゲットした秘蔵酒の画像を同一縮尺で並べてみた。一目瞭然、この二つの容器が同一であることが判明した。秘蔵酒はバカラの既製品をボトルに流用しているのだ。

さらに、グラスの特定作業に取り組む。写真に物差しを当て、デキャンタのサイズからグラスのサイズを計測すると、グラスの高さは9cm前後であると推定された。同じ通販ショップで、高さ9cm前後のグラスを探すと「アルクール リキュール」が該当する。ちなみに「アルクール リキュール」は、高さ9.4cm、容量40cc、定価31,500円、販売税込18,900円である。これについてもデキャンタの場合と同様に、商品画像を秘蔵酒の写真と並べると、またもやみごとに一致する。(写真左)

これまでの綿密な調査により、バカラの価格(税込)は、定価の場合、203,700円(140,700円+31,500円×2個)であることが明らかになった。ディスカウント価格ならもっと安いという見方もあるが、老舗の瑞泉酒造が創立120周年記念のボトルを素性の分からない通販ショップから調達しているとは思えない。正規代理店からの購入とみて間違いないであろう。

超高級泡盛「秘蔵酒」の秘密に迫る最後の調査は、秘蔵酒を保管する琉球漆器の外箱である。写真から見る限り、秘蔵酒に使われている琉球漆器は、バカラとは異なり明らかに特注品である。したがって、真実の価格を知る術はない。しかし、マゴナ研究室としては、無理矢理にでも、もっともらしく説明しなければ、その存在意義が疑われてしまうというものだ。(笑)

そこで、秘蔵酒の写真に物差しを当て、外箱の容積を推測したところ、縦31×横21×奥14cm=9,114ccが得られた。ここで、 (株)琉球漆器のホームページから得たほぼ同一容積(24×23×15cm=8,280cc)の二段琉球重箱(8寸)の販売価格56,000円 (税込)を参考に、外箱価格は二段琉球重箱の容積に比例するというかなり乱暴な仮定を置き、外箱の価格を推計した。結果は61,640円(=56,000円×(9,114cc÷8,280cc) )となった。(写真は(株)琉球漆器のページより転載)

これまで延々と続けてきた調査により、瑞泉酒蔵「秘蔵酒」の製造原価(税込み価格)は、泡盛25,367円+ボトル140,700円+グラス63,000円+外箱61,640円=290,707円であることが判明した。ここに至るまでの大胆な推論により、秘蔵酒の製造原価が明らかになったのはうれしい限りである。ところが、この分析を正しいと仮定すると、今度は、実売価格525,000円と製造原価の差額234,293円は、一体何なのかという問題にぶち当たる。この解釈は実に難しい。

一般に、希少価値のある商品にはプレミアムが発生する。しかし、供給が限定12本という異常な状況下で需給曲線うんぬんについて言及し、プレミアムが発生しているというのは全くのナンセンスである。あっさりとプレミアム理論を放棄し、次なる解釈をひねり出してみる。

こうした企画商品には多額の商品開発コストが発生しているハズである。仮に年間賃金500万円の社員が、秘蔵酒の商品開発に6カ月かかったとすると、秘蔵酒一本あたりの開発コスト、すなわち一般管理費は500万円×(1/2)年÷12本=208千円となり、消費税の5%を上乗せすると218千円となる。これは、先に示した実売価格と製造原価の差額234千円にかなり近い。老舗の瑞泉酒造が創立記念ボトルに利潤を乗せるとは考えにくいことから、この説明にはかなりの説得力がある。

マゴナ当研究室としては、瑞泉酒造の秘蔵酒の価格は、概ね製造原価30万円と商品開発コスト20万円で構成されていると認定したい。当然だが真実は瑞泉酒造のみぞ知ることではあるが、毎度のことながら、当研究室の分析結果を信じるかどうかは読者の勝手であることを付け加え、今回の研究成果としたい。

【閑話休題】
瑞泉酒造の泡盛古酒(くーす)の価格決定式によると、泡盛は連続複利12.19%の複利計算に従って決定されることになる。山川酒造の「かねやま」の連続複利は12.34%であり、偶然にも瑞泉酒造のそれとほぼ一致している(12月6日の記事参照)。ここまで両者の連続複利が近似すると、この12%という数字には特別の意味があるに違いないと思わざるを得ない。研究のさらなる進展により、泡盛古酒価格の統一理論が構築できるに違いないと確信する今日この頃であった。オイ、オイ、本当かよ。。。。(笑)


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Posted by magona Laboratory at 00:00 │ドリンク