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2009年09月28日

バドミントン写真撮影のヒント

バドミントン写真撮影のヒントバドミントンのビデオ撮影のノウハウについては、2009年3月20日の記事で解説したが、今回はその続編、写真撮影のノウハウである。といっても、マゴナ研究室における写真撮影の研究は歴史が浅く、知識、技術ともに初心者のレベルを超えていない。実のところ、写真撮影に興味を持ち、中級機クラスのコンパクトデジカメを購入したのが昨年の10月。さらにツボにハマってデジタル一眼レフを購入したのは今年3月であり、写真撮影のノウハウ伝授というには100年早い。

写真の世界は趣味レベルからプロに至るまで愛好家が多く、生半可なウンチクでは失笑を買う恐れがある。したがって、写真撮影に関する記事を掲載することについてはかなり躊躇したが、この1年間、子供の出場したバドミントン大会で数千カットを撮影し悪戦苦闘した経験がある。また、幸いにもバドミントン競技の撮影という極めて限定的なテーマについては、ネット上を検索したところ情報量も少ない。こうした安心感もあり、今回は、筆者が試行錯誤の末たどり着いた「バドミントン競技撮影のヒント」を紹介したい。これまでの「○○の極意」という自信満々のタイトルに比べれば、今回のタイトルがいかに控えめな表現となっているかはご理解いただけると思う。(笑)

バドミントンの試合を観戦した経験のある方には「当たり前だのクラッカー」であると思うが、体育館の状況について若干説明したい。バドミントンはコルクに水鳥の羽を刺した5グラム程度の白色の球、いわゆるシャトルコックをネット越しに打ち合う競技である。シャトルコックはその空力特性から初速と終速の差が極端に大きく飛行曲線は放物線を描く。結果、競技者が視線を上方に向ける機会が多く、外光で競技者がシャトルコックを見失わないように体育館の窓には遮光カーテンが架けられる。体育館内はAUTOモードに設定したカメラのフラッシュが自動発光してしまうほど暗いのだが、当然にフラッシュは厳禁である。この圧倒的な光量不足の状況下で満足のいく写真を撮るためにはそれなりの機材とテクニックが必要となる。

バドミントン写真撮影のヒントまず機材だが、シャッター優先モード(S)やマニュアルモード(M)を設定できない廉価なコンパクトデジカメでは撮影が困難であることをあらかじめお断りしておく。最低でもシャッター優先モード(S)を備えた中級機クラスのコンパクトデジカメが必要である。さらにデジタル一眼レフに開放F値2.8以下(注)の明るい望遠レンズ(左写真)を準備できれば、撮影が成功する可能性はグンと高まるが、今回の記事では、あえてコンパクトデジカメによる撮影ノウハウを中心に紹介する。基本性能の劣るカメラでそれなりの写真を撮影するには、「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」「オートフォーカス・スピード」などのデジカメ撮影の基本を正確に理解することが必要であり、ひとたびこのノウハウを習得すれば、より高機能なデジタル一眼レフでの撮影はさほど難しくなくなるからである。

(注)開放F値はレンズ性能を示し、F値が小さいほど暗い場所でも明るい写真が撮ることができる。左上の機材は、カメラはCANONのEOS KissX2、レンズはTAMRONのSP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A09)

バドミントン写真撮影のヒント撮影にはパナソニックの中級機クラスのコンパクトデジカメDMC-FZ28(左写真)を使用する。チョット見は一眼レフのようなデザインであるが、大きさはデジタル一眼レフより二回りほど小さく、重量も一眼レフの1kg前後(レンズ込み)と比べると370gと極めて軽量である。スペックは画素数1,070万、焦点距離27mm-486mm (35mm換算)、F2.8-F4.4、撮像素子サイズ1/2.33インチで、F2.8の明るいカールツァイスレンズと486mm(18倍)の超望遠ズームが特徴である。惜しむらくは、画質を左右する撮像素子サイズが普及型のコンパクトデジカメと変わらない1/2.33インチと小振りであることだ。体育館内での撮影では、光を受け止める撮像素子サイズが大きいほど撮影が成功する確率が高く、デジタル一眼レフに比べて撮像素子サイズが10分の1しかない1/2.33インチのコンパクトデジカメではシビアな撮影技術が要求される。

バドミントン写真撮影のヒント前置きはともかくDMC-FZ28で撮影した写真を確認していただきたい。左写真は一見すると、まあまあ写っているではないかとの印象を与えるが、拡大すると画質は粗くピントも甘い。せいぜい2L判のプリントに耐えられるかどうかという程度である。しかし、この程度の写りでもコンパクトデジカメでの撮影となるとけっこう難しい。逆に言えば、コンパクトデジカメではこの程度の写真が限界であり、これ以上の画質を望むのならデジタル一眼レフに登場していただくしかない。

[参考] サンプル写真のExif(撮影)情報
撮影モード:シャッター優先(S)
ISO感度:800
シャッタースピード:1/100秒
絞り値:F3.2
露出:-0.66EV
焦点距離:55mm(35mm換算)
手ぶれ補正:あり
ホワイトバランス:オート
オートフォーカス:一点高速
画像サイズ:3420×2565(トリミングなし)
編集ソフトによる明るさ補正:あり

撮影にあたっての最大のポイントは撮影モードの設定である。屋外撮影ならプログラムモード(P)に設定すればほとんど問題は生じないが、体育館の場合には光量不足のためシャッタースピードが1/30秒とか1/60秒のスローシャッターに自動設定され、被写体ブレが頻発する。被写体ブレを止めるには、シャッター優先モード(S)を選択し最低でもシャッタースピード1/100秒以上に設定する必要がある。できれば1/250秒以上が望ましいが、シャッタースピードを上げすぎると適正露出の限界を超え、液晶に表示される画像はどんどん暗くなっていく。ISO感度を上げることで適正露出の範囲を広げることは可能だが、ISO感度を上げすぎると副作用で画質が粗くなってしまう。テレビCMでは高感度(高ISO)を売りにしているデジカメも多いが、そもそも撮像素子が小さいコンパクトデジカメでは1600以上のISO設定はあまり実用的ではない。筆者の感覚ではDMC-FZ28のISO感度は800までが実用領域である。つまりカメラ設定だけでは、被写体ブレを止めるのに必要なシャッタースピードと明るさの両方の条件を満たすことはできないのだ。

問題は、「被写体ブレ」の解消と「明るさ」のどちらを優先するかということになるが、バドミントン競技の撮影においては、「被写体ブレ」の回避を最優先とし、露出不足は画像編集ソフトで補うというのが正解だ。ところが画像編集ソフトによる明るさ補正もやり過ぎると画質の悪化を招く。したがって、実際の撮影にあたっては、ISO感度、シャッタースピード、絞り、露出の諸パラメータを調和のとれた最適レベルに設定することがキモとなる。しかし、これらのパラメータの最適値は体育館の照明状況によって大きく変化するため値そのものにそれほど意味はなく、大切なのは適切な設定値を得るための手順であり、次にそれを示す。

[手順1] ISO感度を画質的に我慢できる限界の高感度に設定する。高感度に設定すると画像の粒子感が強くなり、いわゆるザラついた写真になる。どこまで我慢できるかは撮影者の感覚しだいであるが、コンパクトデジカメでは400から800が限界と思われる。なお、撮像素子がAPS-Cサイズのデジタル一眼レフでは1600くらいまでは実用領域であり、フルサイズのフラッグシップクラスともなると3200以上でも問題ない品質を確保できるようである。

[手順2]シャッター優先モード(S)を選択し、シャタースピードを1/100秒~1/125秒に設定する。コートを激しく動き回る競技者の動きを止めるには、1/100秒では遅すぎるのだが、コンパクトデジカメの性能を勘案すると、このあたりのシャッタースピードで我慢しなければならない。当然、シャッターのタイミングもシビアになり失敗写真の確率も高まることから、とにかくジャンジャカ撮影することが大切である。筆者も1日400~500枚は撮影する。

[手順3]上記の手順を踏んで、さらにF値を小さく設定できる場合には、シャッタースピードを可能な限り高速側に設定する。例えば、1/100秒を1/160秒に再設定する。この状態で露出が適正範囲に入っているのなら設定作業は終わりである。しかし、暗い体育館ではシャッタースピードを1/100に設定しても露出不足となる場合がある。その時はパソコンの画像編集ソフトでの明るさ補正を前提に露出不足については観念しなければならない。

以上が設定作業の基本的考え方だが、コンパクトデジカメの望遠レンズは、レンズの広角端ではF値は小さく(明るく)なり、望遠端ではF値は大きく(暗く)なるという特性にも気を付けなければならない。つまり被写体をズームアップするとレンズは暗くなる。体育館が暗く露出不足が生じている場合には、過度のズームアップは厳禁である。そのような場合は、なるべくレンズの広角側で撮影することで露出不足をカバーしつつ、画像の余分な部分については画像編集ソフトのトリミング機能でカットするのが正解となる。

加えて、コンパクトデジカメでの撮影にはもう一つの難関がある。それはシャッターを押すタイミングである。デジタル一眼レフと異なりコンパクトデジカメは液晶画面を見ながら撮影するいわゆるライブビュー撮影が普通である。ところが、ライブビュー画面に示される映像は、レンズを通して画像素子に到達した映像を液晶画面上に再生したものであり、実際の被写体の動きよりほんの少し遅れている。スナップ写真では大きな問題とならないが、動きの激しいスポーツ写真ではこのコンマ何秒かのズレが致命傷となる。液晶画面を見てシャッターを切っても、被写体の現実の動きはその先を行っており、イメージ通りの画像が得られない。コンパクトデジカメで動きの激しい被写体を撮影するには、あらかじめ被写体の動きを予想し、液晶に表示される映像の動きより少し早いポイントでシャッターを切るしかない。しかし、この技術の習得には、ひたすらシャッターを切りカメラの癖をつかむしかない。

さらなる難点は、コンパクトデジカメはオートフォーカスのスピードがデジタル一眼レフに比べて圧倒的に遅いことである。普通に被写体を狙ってシャッターを押しても、ピントが合うまでに時間がかかることから、シャッタータイミングを逃してしまう。したがって、ピント合わせには「置きピン」と呼ばれる技法を使うしかない。これは、予め被写体が動いてくると思われる場所に、シャッターを半押し状態でピントをロックしておき、そこに被写体が動いてきたときにシャッターを全押しするのである。しかし、これが的確にできるようになるためには、バドミントンの競技者の動きに対する深い洞察が必要であり、恐らく初めてバドミントン競技を観戦する皆さんには、競技者の動きを予想することは極めて困難であるに違いない。

このように、コンパクトデジカメでバドミントン競技を撮影するには、カメラの設定に対する理解、画像編集ソフトのノウハウ、バドミントン競技への深い理解の3つが必要であり相当の困難が伴う。しかし、それでもできあがった写真が満足いく保証はどこにもない。実は、筆者がDMC-FZ28を購入してわずか半年後にデジタル一眼レフを購入したのも、コンパクトデジカメでは満足のいく写真が撮れなかったのが最大の理由である。客観的に見てDMC-FZ28は悪いカメラではない。筆者も屋外撮影ではコンパクトで望遠のきくDMC-FZ28を持ち出すことが多い。しかし、バドミントン競技に関しては、コンパクトデジカメによる撮影は難易度が高い上に写真品質もそれなりで、あまりお勧めできないのが実態である。読者の皆さんには今回の記事内容を応用した上で、デジタル一眼レフで満足のいく写真を撮影してほしいと願うばかりである。(笑)


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