2013年4月22日の記事で紹介したとおり、マゴナ研究室(兼住宅)の構造は決まった。次にこだわるべきは家の間取りである。間取り次第で住みやすさは大きく変わってくる。マゴナ研究室ではこの課題を解決するために以下の5冊の参考書を購入し勉強を重ねた。私見だが、このなかで特に参考になったものは①と②である。
① 安らぐ家は「間取り」で決まる 著者:上田康允 出版社:成美堂出版 定価:1,200円
② 住まいの解剖図巻 著者:増田奏 出版社:エクスナレッジ 定価:1,800円
③ 住宅・インテリアの解剖図巻 著者:松下希和 出版社:エクスナレッジ 定価:1,800円
④ 家庭が崩壊しない間取り 著者:佐川旭 出版社:マガジンハウス 定価:1,500円
⑤ 主婦が考案した住みやすい家102の知恵 著者:竹岡美智子 出版社:講談社 定価:1,400円
投下コストは定価ベースで総額7,700円となる。うち何冊かは中古本を購入したので、実際はもう少し安い。しかし重要なのは金額の多寡ではない。筆者の周りを見回しても、住宅建築という千万円単位の投資にも関わらず、勉強不足のまま住宅建築に取り組むケースが多いのではないかと感じる。建築業者やマンションの営業担当者からの提案が納得できるものなら良いが、そうでないケースもある。さらに悪いのは本人に知識が無いばかりに提案時点では納得したつもりだが、後でそうではなかったと後悔するケースだ。特に間取り変更は大規模な改築を伴う場合が多く、住宅ローンが残っている間はほぼ不可能といっても差支えない。
マゴナ研究室建築の打ち合わせでは、当方の要望事項をハウスメーカー営業担当者に伝え、1週間に後に間取りプランの提示を受けるというプロセスを踏んだ。ところが、なかなかこちらのイメージが伝わらない。2度目の提案を受けた段階で、これでは永久に打ち合わせが終わらないことを確信した。別に営業担当者の能力が低いわけではない。担当者はニーズに忠実に応えようとしていた。しかし、できあがった図面は一応こちらのニーズを満たしているものの、そこかしこに無駄なスペースが発生し、いかにも美しくない。
考えてみれば当たり前である。特に、マゴナ研究室の敷地形状は旗竿地であり、玄関の位置が固定されることから間取りの自由度は極めて低い。その制約条件の中で筆者の要望を100%達成する配置はそもそも困難である。どこかで妥協が必要となる。しかし、営業担当者は筆者から出された要望事項をどの優先順位で処理すればよいかが分からない。しかも、それぞれの要望は独立的に存在するのではなく、相互に複雑に影響しあっている。他人任せで納得のいくプランができるかといえば土台無理な話である。
結局、自分で間取り図を作成することを営業担当者に伝え、「間取りっど3」という2次元間取り作成CADソフトを購入した。値段は5,000円前後と同種のソフトと比べてかなり安く、操作方法も2次元ソフトということもあり容易であった。4カ月弱をかけて理想の間取りを追求し、制作した間取りは16案にのぼる。左図がその時点での完成版である。
間取り図が完成した後のステップは、間取り図をベースに設計士が設計図を書き起こすことになる。「間取りっど3」では壁の厚さは外壁も屋内の仕切り壁も同一の厚さしか設定できないが、設計図では、屋外の壁の厚さは1階と2階で異なる。また屋内の壁の厚さも、構造が木造かコンクリートの構造壁かで異なる。したがって、実際に仕上がってくる間取り図は「間取りっど3」で作成したものとは完全に一致しない。細かなところでの調整が必要となる。
ここまでくると、より細かな設定が可能となる間取り&3D住宅デザインソフト「3DマイホームデザイナーLS3」(MEGASOFT社)を購入しなければおさまらない。設計図のデータをミリ単位で「マイホームデザイナー」に入力し、PC上で3次元化してみる。「マイホームデザイナー」では外観、内観ともにボタン一つで立体化でき、いろいろな角度から建物の完成イメージをチェックできる。さすがに、毎日完成図を眺めているといろいろなことに気がつく。(左図はマイホームデザイナーで作成した間取り)
動線からドアの開き方や収納の位置、視線から窓のサイズ・高さなどについて、幾つかの見直し箇所が発見できた。こうした地道な手順を踏んだことにより、マゴナ研究室は完成後およそ1年半を経過しているが、間取り上の不満はほとんどない。5冊の「間取り関連書籍」と「マイホームデザイナー」の2万円弱の投資で満足のゆく住宅ができると思えば安いと思うのだが、皆さんはどうだろうか。
【閑話休題】
今回の間取りで重視したのは、①1階に年寄りが住むことを想定し、居間・トイレ・浴室の動線を最短にすること、②強烈な西日からの熱を遮断すること、③将来の2階増築を想定すること、④近隣住宅と視線がぶつからないこと、などである。まあ結局のところ、住宅の間取りを評価できるのは施主だけであり、客観的な評価基準の存在しない自己満足の世界である。しかし、いくら自己満足といっても時間の経過とともにその評価が変わらないことが重要なのであろう。その意味では、1年半が経過しても満足感が継続している点は大きく評価できると、更に自己満足を重ねるのであった。