激写、ヤンバルクイナ
筆者が小学生の頃、沖縄県に生息する天然記念物といえば「ノグチゲラ」がその代表であったが、最近では、1981年に新種として認められた「ヤンバルクイナ」に完全にその座を奪われている。テレビでは「サーターアンダギー」の歌う「ヤンバルクイナが飛んだ」がヒットし、『ヤンバルクイナは飛んだんだ あの雲の切れ間に向かって~』というフレーズを一度は聞いたことがあるに違いない。(左写真は琉球切手に描かれたノグチゲラ)
それほど親しまれているヤンバルクイナだか、その生息地は沖縄の北部の原生林、山原(やんばる)地域に限定されており、ほとんどの沖縄県民は、その実物を拝むことはない。かくいう筆者もテレビや剥製以外でその姿を確認したことがなかったのである。
ところが、先日、数年振りに沖縄北部の東海岸を巡り、最北端の辺戸岬に向かうドライブの途中で、ヤンバルクイナに遭遇する幸運に恵まれた。国道58号を安田(あだ)から楚洲(そす)を経由し、奧(おく)に向かって北上すると、道路のそこかしこに「ヤンバルクイナに注意」といった電光掲示板や標識が目に付く。道路の脇は雑木林で民家も見あたらない。当然に、人っ子ひとりなく、対向車も数分に1台といった状況だ。しかし「ヤンバルクイナに注意」の標識の数が半端ではない。
「これだけ標識があるのなら、ヤンバルクイナに会えるかも」などと話しているうちに、30mほど先の藪に小さな鳥影を確認した。車から降りてゆっくりと近づいたが、もはや影も形も見あたらない。一瞬のことであったので確信は持てないが、ヤンバルクイナの可能性は高い。こうなってくると、ドライブの目的は、急遽、ヤンバルクイナ捜索に変更だ。全域F2.8(35mm-125mm)のレンズを装着したデジタル一眼レフカメラ(CANON Kiss X2)のスイッチを入れ、助手席のカミさんに手渡し、撮影即応態勢に移行する。カメラの設定は藪の薄暗い状況を想定し、絞り優先のF2.8とする。続いて、車の窓を全開し30Km/hで低速走行、後部座席の子供二人を含めた四人で周りを注意深く監視する。
この状態で数分走ると、こんどは右前方にかすかに動く物体を発見した。よく見ると赤いくちばしのヤンバルクイナではないか。すぐさま車を路肩に寄せ、一眼レフを構えて連写である。撮影した写真は合計12枚。写真に記録されるEXIF情報から確認すると要した時間は11秒。ヤンバルクイナの発見から車を止めて撮影に移るのが約5秒とすると、この遭遇劇はほんの10数秒間の出来事である。「ヤンバルクイナに注意」の看板の多さはダテではない。ドライバーは本当に注意して走行しなければならなかったのだ。写真は撮影した中で一番写りのいい一枚であるが、どこにヤンバルクイナがいるのかは簡単には分からない。これでは「ウォーリーを探せ」だ。そこで、写真の中央部分を拡大したのが次の写真である。ここまで拡大すればヤンバルクイナであることが明らかだ。
ヤンバルクイナとの遭遇劇はあっという間であったが、その後もスロー走行で捜索活動を続けていると、後部座席の子供2名がまたもや藪の中にヤンバルクイナを発見した。また、翌日の琉球新報には「5月はヤンバルクイナの繁殖期で活発になる時期」との記事が掲載された。このような絶好なタイミングに、たまたま山原路をドライブしたことが、一日に二度(もしかしたら三度?)もヤンバルクイナにお目にかかれる幸運につながったのである。この幸運に味をしめ、今後、ドライブ途中で「○○に注意」看板を見つけた時は、安全運転に心がけつつ、周りの状況に注意を払っても損はないと思うのであった。(笑)
=======琉球新報の記事 引用開始=======
餌求めクイナの親子 きょうから「愛鳥週間」(2010年5月10日)
野鳥や自然環境保護の普及啓発を図る「愛鳥週間」が10日から始まる。野鳥が繁殖や子育ての時期を迎えている本島北部のやんばるの森では、4月下旬から5月上旬の大型連休中に国の天然記念物ヤンバルクイナが道路沿いを活発に動き回る姿や、親鳥がひなを引き連れて餌を探す姿が撮影された。一方で、この時期には道路を横断するクイナが交通事故に遭う被害も後を絶たず、今年は4月末までに8件発生。その後も2件相次ぎ、8日現在、計10件。4月までの発生件数は過去最多となり、23件発生した2007年の最悪ペースを上回る可能性も懸念される。環境省やんばる野生生物保護センターでは、国頭村内の道路沿いに安全運転を促す看板を設置して、注意を呼び掛けている。愛鳥週間は16日まで。15日には金武町億首川で野鳥観察会も開催される。
=======引用終了=======
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