2008年04月11日 00:00
さらに議論を進め、「車窓から遠くに見える被写体ほど垂直方向からの傾きが小さい」という現象を理解するには、「コペルニクス的」発想の転換が有効である。コペルニクス的と言うと大げさに聞こえるが、「革命的」といった意味ではなく、単に「天動説から地動説への転換」の比喩として捉えていただきたい。つまり、今までは被写体は動かずに撮影者が移動するという前提であったが、今後は、撮影者は動かず逆に被写体が動くという前提で考えるのである。(笑)
新幹線の最高速度はおおよそ時速270kmである。現実世界では観察者が時速270kmで移動しつつ地上の物体を観察しているのだが、コペルニクス的発想の転換にしたがえば、観察者は移動せずに被写体が時速270kmで移動していると考
えるのである。この前提のもとで、「携帯動画の傾く映像」が発生する現象の一般化に取り組んでみたところ、以下の結論が得られた。
[一般化で用いる記号の定義]
a[s] :CMOSが映像を記録する時間。いわゆる、シャッタースピード。
b[m/s]:被写体の移動速度。
c[m] :観察者と被写体との距離。
θ[°] :観察者を頂点とする被写体の移動前と移動後の位置が形成する角度。
c[m]・tanθ[°]=a[s]・b[m/s] ・・・・式①
この関係は次の数式で表すことができる。
c'[m]・tanθ'[°]=a[s]・b[m/s] ・・・・式②
さらに、式①と式②を解くことで、次の数式が導かれる。
tanθ[°]÷tanθ'[°]=c'[m]÷c[m] ・・・・式③
この式③は、「観察者が、同じ速度で移動する近くにある被写体と遠くにある被写体を同時に撮影する場合、それぞれの被写体について観察者と被写体の移動前と移動後の位置から形成される角度の正接(タンジェント)に関する比は、それぞれの被写体の観察者からの距離の比に一致する」ことを示している。例えば、θを30°、θ'を15°とすると、tan30°÷tan15°=0.577÷0.268=2.153となる。この2.153の値は、観察者から見て被写体T'は、被写体Tの2.153倍遠くに位置していることを意味する。
さらに、カメラのシャッタースピードと撮影者の移動スピードが分かれば、数式①を活用して、被写体との距離を計測することも可能となる。現時点では、アドエス(Advanced/W-ZERO3[es])のシャッタースピードに関する情報がないことから、先に示した新幹線からの撮影写真を詳細に解析することはできないが、今後シャッタースピードが明らかになれば、新幹線のスピードを270[km/h]と仮定することで、新幹線の線路から被写体までの距離が推定できてしまうのである。これは伊能忠敬もビックリの三角測量の応用といってもよいであろう。(笑)
さて、今回の記事は、出来の悪いCMOSを使った安物デジカメの新たな活用方法を開拓したことで座布団2枚程度の自己評価である。今後、この発見をどのように活用・発展させるかは全て読者の皆さんに委ねられているといっても過言でないのである。